2009年12月22日火曜日

ボラティリティの話 4

このエントリーは2009年12月19日のものです。

前回は少し横道に入ってしまいましたが、私が言いたかった事はボラティリティが高いと儲けにくくなると言う話です。但し、非常に高い値段になる可能性は高くなります。
宝くじのように大儲けする人も出てきますが、普通の人は儲かりませんと言う話でした。

下の図は株価100円、期待収益率0、15%と30%のボラティリティの株を売買した結果のグラフです。
30%の方が悪いのですがどちらも同じようなもので、見分けがつきにくですよね。



















月次にして株価の様子を見えるようにと考えましたが失敗でした。シュミレーションのサンプルが200本では少ないのと25年では長過ぎました。

そこで1時点の株価の散らばりならば、時系列のデータは必要がありませんので、オプション価格算出時のモンテカルロの株価部分だけ使ってもう少しシュミレーションの数を増やして1万個にしてみました。 具体的にはBox-Muller法を使用して乱数の標準正規分布化を行い、対数収益率から株価を算出しています。これだと15%も30%も同じ乱数からのデータになります。


期待収益率0で、15%と30%のボラティリティの10年後の散らばりです。









ここではボラティリティ15%のものは84円のところがピークですが30%では40円がピークとなります。表の最頻値(Mode)とずれているのはデータを整数化し、グラフはさらに2円刻でヒストグラムをとったからです。 30%の方は確かに儲かる人は少ないのですが右側に裾が長く伸びていき最大値は4,595円もありました。

どうでしょう、これであればボラティリティの高い株は儲けにくい事がわかっていただけるかと思います。
もちろん一攫千金を狙うのであれば別の話になります。 成長しない国の株価は辛いものです。



ここでコメントで吊るされた男さんから質問をもらっていましたが、
これが回答になればと思います。


1)収益率が正規分布する場合 と 2)連続複利収益率が正規分布する場合(つまり収益率が対数正規分布する場合)の比較です。

25年間で期待収益率5%、標準偏差30%になりますが、対応する連続複利の期待収益率と標準偏差は上の表のようになります。
これらもBox-Muller法で同じ標準正規分布化された乱数を使用していますので、運不運はありません。

クリックすれば大きくなります。


このグラフは平均を調整するための期待収益率と標準偏差を入力してあります。




25年後の標準偏差はLN()関数で値を100で割ってSTDEVで計算しました。

2)の法では低価格の部分が持ち上がった形になります。(高めの値に対して、低めの値よりも高い確率を付与する。)

1)の方はアカデミックには通用しませんが連続複利を持ち出した時点で話が終わる事はよくありますので、ポンチ絵等には良いかとも思います。

これらの計算ではイーノさんの「ファンドの海」が大変参考になりました。大変わかり易くできてますのでむやみに参考書を買うよりも良いかと思います。

私も参考書(古いのばかりですが)を漁りましたが、15年程前にマーク・クリッツマンが書き、故青山護さんが翻訳された「数量分析入門」日経、ぐらいしか手元にありませんでした。 ここでは対数正規性について1章割いていますが、普通では分からないだろうなと思います。非常に不親切です。でもこの本はベスト・セラーで米国ではアナリストは皆持ってたものでしたが、どうやって使ってたのか?と今更ながら思いました。

将来の期待収益について話をする時に使用する数字ですが、これはLN関数では無く、5%はやっぱり5%であろうとクリッツマン氏も書いております。

ではまた。

私は理系ではないので、よく間違いますのでご指摘下さい。
質問は歓迎しません。教える程よくわかってないので。

追記
過去データを用いて、将来の期待収益率を推定するにはどの平均収益率を使えばよいのだろうか。過去の値がランダムに分布している場合の将来の収益予測値の最良の推定方法は、算術平均を利用する事である。統計的には、算術平均は任意の年の所有期間収益の最良推定値を与える。過去の経験に基づき、今後何年間かの投資の予想値を推定したい場合にも、算術平均を使うべきである。逆に最終価値の確率分布を推定したい場合には、幾何平均を使うべきである。
The Portable Financial Analyst: Mark Kritzman

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